不動産の2重譲渡と処分禁止の仮処分

広島の弁護士、齋藤法律事務所です。

法律をかじったことがある人にとっては当然の知識ですが、なんとなく常識的でないような気がするのが不動産の2重譲渡の問題です。

例えば、不動産の所有者であるAさんが、Bに対して所有している甲土地を売り、その後Cに対しても甲土地を売った場合です。

端的にいえば、先に登記を取得した方が勝つことになるのですが、すでに他人に売ってしまった土地をもう一度別の人に売ることができるというのは不思議な気がしますね。

さて、先の例で、Bさんが、自分に土地を売ったはずのAさんが、Cさんにも同じ土地を売ったという情報を取得しました。AさんとCさんとの契約では1ヵ月後に登記を移転することになっているようです。この場合、Bさんに何ができるでしょうか。

Bさんは、まずAさんに登記手続きをしてくれと請求できます。そして、Aさんが登記手続きを拒んだ場合、所有権移転登記手続請求訴訟を提起し、訴訟に勝ち、強制的に移転登記手続きをすることができます。

しかし、訴訟手続は普通1ヶ月では終わりません。Bさんが裁判をしている間にAさんからCさんへの移転登記手続が完了してしまうかもしれません。
このような場合、Bさんは、Cさんを相手方として、裁判所に処分禁止の仮処分を申し立て、登記簿に処分禁止の登記をしてもらうことができます。保全手続は通常迅速に審理されますから、1ヶ月もあれば大丈夫です。
とりあえず、Cさんへの登記は処分禁止の仮処分で阻止できます。
この後、Bさんは訴訟に勝って、移転登記手続を行うことになります。

このように、不動産が2重譲渡されても、先の譲受人には後の譲受人の登記を防ぐ手立てがあります。

仮に、Cさんが先に登記を取得した場合、BさんはAに対して債務不履行責任を追及することになります。

広島 齋藤法律事務所 弁護士齋藤有志

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